四月、新入社員を迎えた。
だが、俺のいる企画課へ入る新入社員はいない。
去年、俺は企画課へ抜擢された。
それは入社二年目では大抜擢とも言われる異動だった。
本社の中でも、選ばれた人間が集まる場所。
社内方針が大きいところだが、俺の日々の努力の成果でもある。
何もしなくても、トップが当たり前だった。
だが、ここは何もしないで上手くいくという甘い場所ではない。
優良企業だけあって、集まる人材の質は高い。
英語なんて話せて当然。
ビジネス英語には苦労したが、英語は好きだったから、この点はクリア。
これまた同じような企業に勤めている姉貴に、本をもらい、知識を請えたのは運が良かったと思う。
大抜擢とは言っても、企画課では下っ端の新入社員。
コピー取りや会議の準備をしつつ、先輩の下について仕事を学び数年は過ごす。
有能だが、サボり魔で横暴で酒癖の悪くセクハラありで、俺をコキ使うとんでもないクソ喰らえ的な先輩であっても、耐えていくしかないのだ。
そんな過酷な日々の終わりの金曜日。
この日だけは、遅くても七時には会社を出る。
駅までの道を走り、電車に乗り込み、駅に着くと駐輪場までまた走る。
駅からアパートまでは自転車で15分。
そこを俺は10分あまりで駆け抜けるのだ。