9話「魔力はキスの味」



 自分が魔女になる事よりも独りになるのが怖かった。
 そう実感した時に、空澄は自分がいかに寂しがり屋なのだと知った。


 涙を拭い、少し恥ずかしさを感じながら空澄は希海の胸元から顔を離し、ゆっくりと顔を見上げた。


 「もう大丈夫か?」
 「………ごめんなさい。いい大人なのに泣いたりして。何か恥ずかしいな……」
 「いいさ。大人だってそういう日もある」
 「………うん。ありがとう。ちょっと、顔洗ってくるね………」


 そう言って、空澄が彼から離れて、ソファから立ち上がろうとした。けれど、希海がこちらに体重をかけてきたので、バランスを崩し、空澄はソファに戻りそして、仰向けに倒れてしまった。


 「ちょっ………どうしたの?希海………ふ、ふざけているの?」


 希海に押し倒されるような体勢になり、空澄は驚きながら彼を見つめた。
 先ほどは泣き顔を見られたくなく、希海の表情を見ることが出来ていなかった。だが、首をあげて自分の胸に倒れ顔を埋めている彼を見ると、驚いたことに希海の顔は真っ青になっていた。