8話「真実の不安」



 お風呂上がりのミネラルウォーターと、ホットコーヒーを準備した空澄は彼にホットコーヒーを渡した。



 「コーヒーでよかった?」
 「あぁ、悪いな。準備しようとも思ったけど、なんか勝手にキッチンを勝手に使うのも悪いと思って」
 「………いろいろ詳しいんだね」
 「まぁ、鴉だったし」


 質問の返しの意味がわからず、首をかしげると希海は笑った。
 彼は会ったときからずっと楽しそうにしていた。何がそんなに彼を笑顔にさせたのかはわからない。けれど、希海の笑顔は、空澄をドキドキさせてしまっていた。大人の男の人なのに無邪気に笑う姿は可愛いとも思え、そして少し色気があるようにも見えるのだ。初めて会ったばかりの男性に対してこんな思いを抱くのは不思議だった。


 「…………希海さんはお風呂に入らなくていいの?」
 「希海でいい。ずっと海って呼び捨てにしてただろ?」
 「………そうだけど。年上でしょ?」
 「30歳だから年上だけど、さん付けは嫌なんだよ。だから呼び捨てで呼んでくれ」
 「わかった。じゃあ、希海はお風呂入らなくていいの?」
 「俺は水の中入ってないし、さっき魔力使って汚れは落とした」
 「………本当に魔王なんだね」