4話「言葉なき対面」




 そこからの記憶は曖昧だった。
 どんな話をしたのか、上司に何を報告したのか、そして、どうやって会社を出て、どこに向かっているのか。
 空澄にはわからなかった。

 けれど、空澄はタクシーに乗って遺体安置所まで向かっていた。気づいたらタクシーに乗っていたのだ。

 空澄はハッとし、スマホで璃真に電話をしてみるが、その電話が繋がる事はなかった。
 震える体を抱きしめながら、頭を整理しようと大きく呼吸を整えた。

 小檜山という警官が教えてくれたのは、「璃真だと思われる遺体」だと言う。まだ確定はしていないようだ。
 それだけが空澄には救いだった。彼じゃないかもしれない。璃真のはずかあるはずもないではないか。そう思いつつも、不安で仕方がなかった。


 「お願い………璃真。無事でいて………」


 空澄は手を組んで、目をギュッと瞑って強く強く璃真の無事を願った。