――…正しく真っ当な人間であれ。
幼いころから叩き込まれてきたその言葉を、わたしは忠実に守ってきたつもりでいる。
「したがって、答えはこうなります」
「「「おぉーっ!!」」」
チョークを置いてひとつ肩で息をすると、クラスメイトたちから嬉々とした声が上がった。
4時間目の数学の授業。
テストまであと一週間と迫った中、先生の体調不良で今日は自習だ。
「委員長めっちゃ分かりやすい!ありがとう!」
「私ずっと出来なかったのに委員長のおかげで解けたぁ!」
「俺も授業じゃ分かんなかったけど、委員長の説明でやっと分かったわー」
(よ、よかった…)
白石紗和(しらいしさわ)
明凛学院高校2年C組の学級委員長として在籍。
数学を教えてほしいというクラスメイトの声があり、教壇に立って解説をしていたところだった。