◇
――…上った朝日が、すべて本当だと証拠付けていた。
「この部分の筆者の考えを論じなさいと聞かれたときには、前述の文章を見てみると分かりやすいですね――…」
昨日家に帰ると、伊織の姿も荷物も無かった。
毎日当たり前のように、ふたりだったから。
ひとりがこんなに寂しいなんてもう忘れていた。
…それから伊織の家のインターホンを押しても、出てくることはなくて
携帯に連絡を入れて返ってくることもなかった。
――…当然だ。
大嫌いと言って、走り回って見つけたわたしは高見くんに慰めてもらっていて
果ては、他人のふりをして。
約束を守るためとはいえ、伊織を傷つけてしまったことに変わりはない。