固まった笑顔のまま勇樹は

「満穂…福井さんここに来たの?」

と言った。

マホ姉さんはフクイマホさんがフルネームか~ってそういうことじゃねぇぇ~!

「何でまたこっちに来るかなぁ…あんな風に別れといてモトサヤって調子良すぎじゃね?あんだけ無いわって俺言ったよな…これしっかり牽制しとくか?」

ぎゃ…私の耳は地獄耳~ではなく魔法で勇樹のブツブツ小声も聞こえてしまった。もうしっかりとヤンデレの基礎?を築いていらっしゃる鴻田 勇樹さん、24歳。

はっ…そうだ!

「ちょっとっ今仕事中じゃないの?サボってんじゃないの?ほら、戻んなよ。」

私がそう言うと、ハッとしたような勇樹はじっとりとした目で私を見てから

「逃げたら許さねぇ……。」

とヤンデレの名捨て台詞を残して、転移魔法で消えた………こわっ。

これでいいのかな…。良く分からないヤンデレ化した勇樹に阻まれたせいで界渡りが不発に終わってしまった。

取り敢えず

気持ちを切り替えて食材を買いにスーパーに行き、勇樹の家で夕飯の下ごしらえをしてから実家に戻って鍋の準備を始めた。

鍋の下準備を終えて今日はお父さんが先に帰って来た。

「お帰り~。」

「おお、ただいま。」

「お鍋火にかけて材料入れるだけにしておいたから、それとお風呂も洗っておいたからね。お洗濯物はある?」

お父さんは何だかニヨニヨしている。

「莉奈は若奥さんみたいだな…くぅ、もう嫁にやってしまった気分だっ!」

「なっ…!」

た、確かに今の状態は勇樹の嫁みたいな状態になりつつあるけど、元カノだからね?だってはっきりと言われた訳じゃないしね。

そうだよ、はっきりと言われてないじゃない!

と、思って勇樹のマンションに帰ったら勇樹は玄関で正座をして三つ指をついて私を待っていた。

恐怖再びである。