大きな総合病院だった。ICU(集中治療室)に勇樹は寝かされていた。体に沢山機械が付けられていて、今、本当に意識戻っているの?というくらい勇樹の顔色は悪い。

電子機器と魔力の相性がいいことは分かっているのだが良い事ばかりではない。

精密機械の側で魔術を使うと機械が狂ってしまうのだ。本当は勇樹の近くに行きたいけれど、私のような高魔力保持者は危険だ。

今は廊下の端の方からICUの中をコソコソと覗いていた。

「ご家族の方ですか?」

「‼」

あまりにも不審だったのか看護師さんから声をかけられてしまった。

「ち、ちがいま…。」

「莉奈ちゃん…ああ、来てくれたのね。今ねお父さんが来てて…。」

見つかってしまった…。勇樹の魔質を探して勝手に来た私に、混乱しているのか聡子さんは疑いもせずに走り寄ってきて抱きついた。仕方なく看護師さんに促されて勇樹の側に行く。魔力遮断の魔法を使ってはみたが、心電図モニターとか大丈夫かな。機械の音が気になって覗き込んでしまう。

勇樹のお父さんはスーツ姿だ…仕事抜け出してきたのかな。私と目が合うと少し微笑んでくれた。

「意識は戻ったそうだよ。」

「はい、聞きました…。」

顔色の悪い勇樹の魔質を取り敢えず診てみた…あれ?何度も診てみる…。嘘でしょう?そうやって何度も勇樹を診ている間にICUの入口で聡子さんと女の子の声が聞こえた。

「私、勇樹さんの恋人です!」

「今、莉奈ちゃんが来ているから…。」

「そ…っあの人は前の彼女でっ…。」

ひええ…こんな所で修羅場はやめて~。慌てて私は聡子さんと浮気女の側に駆け寄った。

「帰りますから…聡子さんお邪魔しました。」

そう声をかけると浮気女は物凄い形相で私を睨んだ。