会社を辞める本当の理由を言う訳にはいかないので、新天地で頑張ります!と飲み会で山田先輩と呉川さんに宣言した。

2人共、半泣きになりながら頑張れ、頑張れ、を繰り返している。もう酔っているのかな?

こんな優しい先輩達の記憶の中から自分の存在を消していかねばならないことが辛くて…悲しくて泣き叫びたくなる。

週末はやることが沢山ある。色々な記録から私を消していく作業がある。

少しほろ酔い気分で駅前でお2人と別れて帰路に着く。何から消していこうか…と心の中で考える。

そうだ、消していくリストを作ってチェックしながらにしよう。そして消し終わったら、最後に樫尾のご両親の記憶を消して……勇樹は知らんわ。きっと私の事なんて話題にも出さないだろうし、あいつ1人で戸惑っておけばいい。それぐらいの意地悪は許してくれ。

マンションに帰るまでにあるコンビニで新作のスイーツとかつ丼を買った。もう太るから~とか虫歯が~とか乙女なフリはする必要が無い。

そもそもだ、このまま元居た世界に帰っても国家反逆罪?みたいな罪で掴まって死刑かよくても服役刑だろうし、こちらで思い残すことの無い様に自由を満喫してから帰ろう。

そして捕まるまでにやりたいことがある。

産んでくれた両親に一目会い、産んでくれてありがとう。好きな人が出来て幸せだった…と言いたいのだ。

今以ては、幸せだとは思えないが、そこは嘘をついてでも実の両親には微笑んで見せて頭をさげるつもりだ。

そう思うとあちらに帰ることに希望も湧くし、少しは前向きにもなれる気がする…。

さて家に帰り風呂にも入り、消していくリストを作り始めた。