「もっと車間距離開けろ。」
「はい」

運転席には私。助手席には心平先輩。
私が運転して外回りをするようになってから一か月が経とうとしていた。
「お前、運転上達したな」
「そうですか?」
「前見ろ」
「はい」
まだまだ、先輩からこうしろあぁしろと運転に関する指示が出ることは多くても、アクセルとブレーキは覚えた。駐車も切り返しをたくさんすればできるようになった。

「寝てもいいですよ?」
私が言った冗談に先輩は険しい顔をして答える。
「永遠に起きれなくなるだろ。それ」
「ひどいですね」
「事実だ、ばか」

先輩の『バカ』は一向に減らなくても、むしろ聞けない日は聞きたくなってしまう中毒になってしまった。