「えっ……うそ、何これ……」

「大丈夫。僕がそばにいるから安心して」


わたしは今、とある場所に連れてこられて唖然としている。

というか、今すぐ逃げ出したい。


首をグイーッと上げて、空まで突き抜けているんじゃないかってくらいの、目の前にそびえ立つ建物。


普段全く着ない、パーティーで着るようなドレスに、履き慣れていない細いヒールのパンプス。

足元グラグラで、自分を支えるだけでも精いっぱい。


一緒にいる芭瑠くんはボルドーカラーのベロア素材のスーツに身を包んで、黒の蝶ネクタイ。

いつもよりしっかり髪もセットしている。


「じゃあ、いこうか芙結」


……そもそも、今わたしがどうしてこんな格好をして、どういう状況を迎えているのかというと……。


━━━━━遡ること2日前。


それは突然、晩ごはんの時間に知らされた。