「い、今何と………っ!?」


その場に動揺が広がる。


一人だけではなく、周りにいた大臣や皇帝陛下までもが自身の耳を疑う様に、何度も瞬きを繰り返す。


「何だ、聞いていなかったのか?もう一度しか言わぬ。この者を余の妻へと迎える」


はっきりと王様の口から告げられたその言葉に、皆が言葉を失う。


「な、何故……よりにもよってその娘を?」


皇帝陛下の声は動揺のあまり、微かに震えているのが分かる。



「よりにもよって…か。つまり、そなたは何が言いたい?」

「い、いえ………その娘は皇族から出した恥ずべき罪人でございます。スレンスト皇家の妻が欲しいのでしたら、自慢の娘がございます。礼儀に作法、美しさと全てにかけて非常に長けた娘で……………っ」


言い終わる直前で、皇帝陛下は急に口を止めた。


何故だか、その顔は恐怖に引き攣って見える。