「お前の様な一介の皇女が何故、この場に呼び出されたのか理解しているであろうな」


深紅の絨毯が伸びた長い階段の上から、黒髭の生やした男がこちらへ鋭い視線を向けている。


その表情は娘に向ける顔とは思えない程に険しい。


スレンスト帝国の百二代目皇帝。


ステファン・アレイブ・ドミ・スレンスト。


百年以上も続く歴史深い帝国の皇帝であるこの男は私の実の父だが、家族らしい会話はこれと言って交した記憶がない。


皇子三人に皇女三十二人。


私はその中の二十八番目の皇女。


この男にとって私は、そんな多々いる子供の一人に過ぎない。


"一介"と言う言葉を使ったのも、恐らくそう言った意味なのだろう。