そして迎えた光の君の元服の儀。

私は一応皇室の姫君だから、元服の儀をお母様である藤壺様の横でみることになった



「お母様、凄い人数のお客様がいらっしゃったのね」

「そうよ、この御世で名高い光の君だからこそですよ、ふふ」



ああ藤壺様ってかわいいなあ。
なんかもうすっかりこの世界に馴染んじゃった



そんなことを思っている合間にも
光の君を一度でも目にしたい…と思ってきた人の中では、御簾の向こうにいるであろう
藤壺様と暁の姫君を想像して話をするのでした。


もちろんそれは男性だけではなく、日頃宮中でお2人のお世話をしている女房たちの中でも

「御簾の裏にいらっしゃるのは藤壺様と暁の姫君なんでしょう」
「なんて美しい姿でいらっしゃることか…」
「特に今日なんて光の君の元服の儀ですから、いつにも増してお美しいのでしょうね」
「ご拝見したいものだわあ」

と囁かれるほどでした





ぴ〜ぴろ〜♪


「おかあさま、元服の儀始まりますね」

「ええ、楽しみですわ、ふふ」











そして無事に式が終了

にしてもお兄様お美しかったわあ


ん?





「ねえおかあさま、今源氏の君の横でお話ししていらっしゃる方はどなた?」

「さあ、わたくしもまかりませぬ」


誰なんだろう……






その頃

|《光side》

「光の君、この度はおめでとうございます。」

あ、加冠役を引き受けてくれた御方だ

「ありがとうございます」

にしても険しい顔してるなあこの方


「折り入ってお話がございまして来ました」

「何の御用でございますか」

「はい、光の君はこの度元服なさったということでして、大変申し上げにくいのですがー…

わたくしの娘である|《葵(後の葵の上」》を御入内させていただけませんでしょうか」


葵の上?!
あの御方は弘徽殿の女御様からお生まれになった東宮様とご結婚なさるはずでは…!





「おや、左大臣様が何の御用で?」

「帝様。光の君様が御元服されたことですので、私の娘である葵をぜひ入内させていただきたいと思いお願い申し上げていたところでございます」

「おお、そうか

光の君、どうだ、どうするのだ」



まだ元服して間もないというのに…
でもこのタイミングで言うということは、両家の安泰を狙ってるに違いない

それなら…





「わかりました、葵の上を入内させます」


「わ、ありがとうございます」

「おめでとう、光の君」

「ありがとうございますお父上」







と、藤壺様と暁の姫が御簾の向こうにいるときにご婚約が成立したのでございました













そしてその日の夜のこと


「王命婦、光の君は来ないのかしら」

「さて、どうしたものでございましょう」








「失礼いたします、光の君がおいでになりました」


「あら!やっと来たわ。お通しなさって」

「かしこまりました」




元服の儀の時に何を話してたのか問い詰めてやるんだからっ





「暁の姫、やっとお目にかかれました」


「遅かったですね。何が御用でもあったのではないのですか?」


「ええ

さっき元服の儀の時の左大臣が私の隣に来ましてねー…」



ほら来た、やっぱなんか話してらしたのね





「娘である葵の上とご婚約が決まりました」



「え…?」



「両家の安泰を願ってだと思いますが。」


「お、お、おめでとうございます!」


「暁の姫は喜んでくれるのですね

相変わらずかわいい笑顔で笑ってくれるのですね、愛おしい」


「嬉しいことですもの!」



ちょっと寂しいけど嬉しいこと!





「光の君、おめでとうございます」


「王命婦ありがとう」


「今夜は左大臣家に行かれるのですか?」


「そう思ってたんだけど



あまりにも暁の姫が可愛らしい笑顔で喜んでくれたので今日はここで寝ます」



「ほ、ほんとですか?!嬉しい」


「はい、本当ですよ」


「やったあ」





「なんて可愛らしい兄妹なのでしょうか」
「光の君と暁の姫がご結婚なさるのを願っていたのですがね、ふふ」
「婚約者じゃなくても兄妹でこんなに仲がよろしいのならそれでいいですわね」




とまたも囁かれるのでした