――ずっとキラキラしている子たちがうらやましかった。
2時間目が終わってからの20分休み。チャイムが鳴り始め、静かだった廊下は賑やかに。
椅子の脚が床を擦こする耳障りな音が方々から聞こえる中、私、大宮未華は今朝買ったパンを手提げカバンから出して、急ぎ足で教室をあとにする。
向かう先は校舎内にある自動販売機。予定通りに誰よりも早く到着してホッとする私は、曲がり角の壁にもたれてパンの袋を開けた。
すぐ咥えられるよう数センチだけ袋から出しておく。
ひと口だけ食べようかと思ったけれど、そろそろ彼が現れる時間だ。食べたい気持ちを抑え、角の向こうを覗き見た。
「来てないなぁ」
私が待っているのは同じ1年の佐藤絢斗くん。背が高くて見た目がカッコいい男の子。
クラスが離れている私は10月の文化祭で初めてその存在を知ったけれど、トイレで偶然耳にした話では、入学当初から彼のカッコよさは全生徒に広まっていたらしく、休憩のたびに先輩の女子が教室へ押し寄せていたほど有名な人みたい。
初恋の相手がそんな人だなんて、なんだか小説やドラマの主人公になったような気分だ。