――少し無口ですが、優しい人です。

 婚約者である彼のことを、はにかみながらそう語っていたライゼちゃん。
 彼が戻ることを信じて待っている彼女が、この事実を知ったらどんなにショックを受けるだろう。

「そんで、おめぇは? あいつとどういう関係だ。なんで知ってる」
「え?」

 じろりとドゥルスさんに睨まれ、私は言葉に詰まってしまった。
 嫌ってはいても娘の夫。その彼のことを知る私が気になるのは当然だ。

(でも、実はフォルゲンさんの婚約者だった子と知り合いで……なんて言えるわけないし)

「そう睨むなドゥルス。彼女は今の私の雇主でな。以前共にフェルクに立ち寄った折りにその名を耳にしたんだ」

 助け船を出してくれたのはセリーン。
 お蔭でドゥルスさんの視線が外れ激しくほっとする。

「とても腕の良い医者だったと皆惜しんでいたぞ」
「やはりフェルクの地でもフォルゲンは有名だったんですね」

 誇らしげなクストスさんの後ろでドゥルスさんは面白くなさそうにけっと悪態をついた。
 私はこっそり視線でセリーンに感謝を伝え、なるたけ平静を装うようにした。

「で、城の話はいつ聞けんだ」

 その時小さなラグが溜まりかねたように声を上げた。