両親とおじいちゃん、おばあちゃんに妊娠の報告に行った翌週。私は住んでいたアパートを引き払い、村瀬さんの自宅に引っ越した。

 初めて彼の自宅を目にした時は、あまりの豪邸に腰が抜けそうになった。ムラセの社長のご自宅だもの、すごい家だと予想はしていたけれど、その予想の遥か上をいっていた。

 地上三階、地下一階からなる近代的な造りの一軒家。玄関は全面大理石で、その美しさに圧倒された。リビングも天井が高くて開放感があり、三十畳という広々とした室内には、暖炉が完備されていた。

 一般家庭にはない書庫やシアタールーム。他にトレーニングルームやカラオケ部屋もあり、寝室やトイレ、浴室に至るまで豪華な造りとなっていて、カルチャーショックを受けたほど。

 だけど彼が言っていた通り、家政婦さんには温かく迎え入れられ、新たな生活をスタートさせることができた。



「えぇっ!? さ、さくらが妊しっ……」

 大は最後まで言わせてもらえず、光美に思いっきり頭を叩かれた。

「バカ! ここがどこだかわかってるの!?」

「わ、悪い。びっくりして……」

 そんなふたりのやり取りに笑みが零れる。