愛しの土日が明けて、眠い目をこすりながら登校していく。
自宅から学校までは、片道1時間以上かかる。授業の組み方的に登校が遅いから何とかなってるものの、もしこれが全日制高校だったら…と考えると、ぞっとする。
電車では音楽聴きながら小説書いて、時間に余裕があるためのんびり歩いて学校に到着する。
うちの高校、土足だから楽なんだよねー。
その上クラス単位で動かないからか、掃除当番も無い。
ふとエントランスで見渡すと、見慣れた顔が。
「おはよー、飛鳥ちゃん」
「おぉ…おはよう」
一緒に帰る人を待ったり、休み時間にそこで過ごしたりできるスペースがあって、大きい丸テーブルと椅子がいくつもある。
そこに、貴哉くんがいる。
え、普通にビックリしたんですけど。
「待ち伏せしてたみたいになっちゃった。ん…まあ実際そうなんだけど」
「うわー、ストーカーだぁ」
と、冗談めかして言うと、
「…だって、朝一番に飛鳥ちゃんに会いたかったんだもん」
「朝からとんでもない発言繰り出すねー?」
さすがにちょっと慣れてきたよ。
「今日の最初の授業は?」
「えーっと…コミュ英!飛鳥ちゃんは?」
「古典Bだよ」
「飛鳥ちゃん、もしかして文系?」
「もしかしなくても文系」
貴哉くんは楽しそうに笑った。
「あ、ねえっ。日本史そのまま一緒だしさ、せっかくならお昼に会わない?」
良い提案だ。凜や知愛と無理していなくてもいい。それに、貴哉くんのことをもっと知る機会になる。
けど…。
「私は構わないけど…貴哉くん、大丈夫?」
「へ?どうして?」
「まだ友達関係固まってないでしょ。ちょっと抜けたら、入りづらくなるとかない?」
「あー…うん、大丈夫。僕が今一緒にいたい人といる」
“一緒にいたい人”か…。
良い響きだな。
「分かった。そしたら…日本史の教室にしよ」
「うん!じゃあばいばいっ!」
「またねー」
貴哉くんはニコニコ笑顔で手を振ってきた。
え?何あれ天使?
冷静にそう思ってしまった自分が怖い。