「おはよう、菜結由(なゆゆ)」

朝起きて、支度を終えた私はダイニングに行くと、涼介にそう声をかけられる。

彼は朝食のトーストを頬張りながら、少しモゴモゴしてる。それがまた、何だか、好きだなって思った。

「おはよ」

好きとか、思っちゃったのが何故か悔しくて、いつもの顔で返す。
だけど彼は、お茶を飲んでふふっと笑う。

「え…何?」

「え?だって、オレのこと好きだなって顔したから」

まだ可笑しそうに笑う。
いつだって涼介は、私の心を読み取りすぎだ。

「オレも、菜結由のこと好きだよ。毎日大好き!」

そう明るく言ってくるのだから、照れるなとか無理な話で。

「もう!朝からイチャついちゃって!毎日毎日、自分の娘と息子がそういうやりとりしてるの見て、私どんな気持ちでいればいいのよー」

リビングで洗濯物を畳みながら、母が苦笑を浮かべながら言った。
いつもの光景。

「あっはは、ごめん母さん。菜結由が可愛すぎて…」

だから、そういうのだと思う。私と涼介が血縁関係が無いから疚しいことはないのだけど、やっぱり2人きりの時が良いんじゃないかな。

「ほら、そろそろ食べないと遅刻するよ、菜結由」

母のその声にハッとして、時計を見る。

「やっばい、急がなきゃ」

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食べ終わって、支度の続きをして玄関に行く。先程のパジャマ姿とは違う、制服姿の涼介が待ってる。

自分も、同じ制服で…お揃いみたいで心が躍る。毎日見てるのに、どうして涼介はこんなにも魅力的で、日に日に“好き”を募らせてくるのだろう。

「行ってきます!」

「行ってきまーす」

「いってらっしゃい」

2人で外に出ると、涼介は手を繋いでくる。

「手繋ぐの好きだね」

「当たり前じゃん!菜結由はオレと手繋ぐの嫌?」

「そんな聞き方するのはずるい」

涼介は、へへへっと可愛く笑ってみせる。

「大好き」