……不覚だった。

そう思わざるおえない。


「はぁ、学校に行きたくない」


思わず本音とともに、ため息がこぼれた。

学校に行きたくない。教室にだって行きたくない。だって、カンナに会いたくないから。

どんな顔して会えばいいのかわからないから。


「……なんで、逃げれなかったんだろう」


手のひらを開いては閉じ、それを何度か繰り返す。あの時、自分の体が自分のものじゃないようで、どうやって腕を動かしたらいいのか、どうやって声を出したらいいのか分からなかった。

神経が焼き切られていたのかもしれない。そんな風に本気で思ったりもした。

だってカンナの瞳はそれくらい、熱かったから。


「あの、雨宮さん……ですよね?」

「……はい?」


声に驚いて振り返ると、そこには他校の制服に身を包んだ男子が顔を赤らめて立っていた。


……誰?


「えっとー……?」


どっかで会ったことあったかな? なんて記憶の中を探るけど、この手の制服に知り合いがいた記憶がない。


「あの、初めまして。俺、隣の高校の桶谷って言います」


あ、やっぱり初めましてだった。ってことは……。


なんとなくその先は二択だった。道を聞かれるとかそう言った類のことか、もしくはーー。