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お堅い銀行員としての業務を終え、初音はロッカールームでスマホをチェックしている。
来ている通知は日頃から利用している通販やクーポンアプリの広告ばかり。

仕事終わりで飲みに誘ってくれるような友人はそんなにいない。
二十代半ばにもなると学生時代の仲間たちは結婚や出産で散り散りになり、自由な時間も確保し辛くなるものだ。

それに、気の利いたメッセージを寄こしてくれる恋人など皆無だった。
断じてモテないというわけではない――…と初音は人恋しくなると自分に言い聞かす。

それを証拠に、彼女の事を好いてくれる殿方は過去にも何人か存在した。
指折り数えられる程度だが……
仕事でいっぱいいっぱいだったり、恋愛に対するモチベーションが足りなかったりしてその機会を失っていた。
要は“ときめかない”のだ。

気付けば二十代も半ば。
選りすぐりしている余裕も価値も低迷中。

「はぁ……」

初音の口から盛大なため息が零れる。