ケータイ小説 野いちご

岐阜のケーキ屋と車椅子少年。

プロローグ。
信長まつり。


窓まで向かうとカーテンを開けて外を見る。
東京の街だ。変わらない街。
今頃翔馬君。何をしているのかな?

夏休みが終わったから学校だろう。
夏休みの宿題全部終わらせられたのかなぁ?
ショコラも……どうなっているのだろう?
せったく、またバイトしてもいいと言ってくれたのに
諦めて新しい子を雇ったのだろうか?

やっと見つけた居場所だと思っていたのに。
恋とかして……両思いになれて本当に楽しかったなぁ……。
まだ翔馬君に連れて行ってもらっていない場所もある。
信長まつりも参加してない。キムチ鍋も食べてない。
会いたいよ……翔馬君。

悲しくて何も言えなくて
あれから翔馬君にメールすら送れてない。
怒っているかもしれない。
心配しているのかもしれないし会わす顔もない……。
涙を流しているとメールが来た。
翔馬君からだった……。

私は、覗いてみると
『菜乃。何かあったのか?連絡くれないけど
俺さ……昨日倒れて。今入院中なんだわ。
いつもの高熱。39度も』だが途中で切られていた。

私は、それを見て動揺する。えっ?入院!?
嘘っ……元気そうだったのに。
褥瘡(じょくそう)でもなったのだろうか?
車椅子の人は、なりやすいと言っていたし……。

途中で切れたってことは、今も高熱で
苦しんでいるのかもしれない。きっとそうだ……。
意識が朦朧になりながらも私のためにメールをしてくれたのだろう。
なのに……自分は、何もしていない。

高熱に苦しむ翔馬君を想像していた。
あんな苦しそうになりながらも、いつも全力で
明るく振る舞ったり優しい言葉をくれる。
いつも笑いかけてくれた……。

その時にフッと翔馬君の叔父さん達が
言ってくれた言葉を思い出した。
“やらない後悔よりやって後悔しろ”と……。
最後まで踏ん張ってもいないのに……またやらないまま
何で?どうして?と言い訳して後悔している。
私は、また同じ過ちを続けている。

ねぇ……翔馬君ならこのいう時にどうする?
後悔する?今も……?
違う……翔馬君なら後悔する前に動く。
全力で車椅子でもきっと立ち向かおうとしていた。

私は、プレゼントしてもらったペンダントを
握り締めると決心した。クローゼットから
大きなカバンを取り出すとカバンの中に
入れられるだけの服と下着とかを詰め込んだ。
そして勉強机の引き出しを開けて
鍵つきの貯金箱を取り出した。
中身を開けて見てみるとお年玉やお小遣いから
少しずつ貯めていたお金が入っている。
使わずにいたから数万円は、入っていた。
よし。これなら行けるわ!!

私は、岐阜に行く決意をした。
反対されてたから行かないじゃない。
反対されても翔馬君なら行こうとしただろう。
後悔しないために……。

反対されたからって諦めて
ずっと拗ねて引き込もっていても状況は変わらない。
自分で変えようとしないからだ。
なら後悔しないように……私だって前を向きたい。
翔馬君とこれからも一緒に居たいと思った。


< 94/ 128 >