芙蓉たちは、それ以上天満についての情報を明かさなかった。

胸を押さえて俯く雛乃の膝にそっと触れた柚葉は、ふわふわの癖毛を耳にかけて小さく微笑んで雛乃をやんわり促した。


「天満さんに直接訊いてみるといいですよ、きっと教えてくれますから」


「でも…そんな…差し出がましい…」


「そんなことないわよ、天満さんあなたには優しいから、大丈夫」


――確かに天満は優しくしてくれるし、特別扱いしてくれている節はある。

だが女がはしたなく過去の話を根掘り葉掘り訊いてもいいものかと思い悩んでいた雛乃は、ぼんやりしたまま茶会を終えて暁の元に戻った。


「あ、雛ちゃんどこ行ってたの?天ちゃんが心配してたよ!」


「僕もだけど、暁の方がずっと心配してたよ」


縁側で天満の膝に座ってご満悦だった暁は、雛乃に駆け寄ってぎゅっと手を握った。

…天満は朗らかで太陽のように温かくて優しい。

妻を失うまではきっともっと明るかっただろうに、時折見せる翳りがどうしても気になる。

この際――はしたないと思われても気になるものは気になるのだから、訊くべきだと自身を鼓舞した雛乃は、暁が髪に挿していた藤の花の形をした髪飾りを指した。


「それも…奥様の形見なんですか?」


天満が一瞬ぎょっとした表情をしたのを雛乃は見逃さなかった。

未だにその美貌を直視することはできないが、それでも何度もちらちらと上目遣いを様子を窺っていると、天満は暁に木刀を投げてよこすと、池の方を指した。


「素振りの練習をしておいで。僕はちょっと休憩するから」


「うん!」


言われた通り素直に池の方に箸って言った暁を見送った天満は、ひとつ息をついて隣をぽんぽんと叩いた。


「誰から訊いたのか想像がつきますけど、訊きたいならここにどうぞ」


「あ、あの…はい…」


おずおずと天満に隣に座った雛乃は、天満が小さな声で‟どこから話そうかな”と呟いたのを聞き逃さなかった。


「最初から…最初から教えて下さい…」


「…長い話ですよ」


「構いません」


あなたが、気になるから。