「お疲れ様。おばあ様問題なくってなにより。十五分後に病院のロータリーに迎えに行きます」

高峰さんからの返信のメッセージに私は二度見して固まった。

「あら、夏乃どうしたの? そんな固まって」

「なんか、十五分後にここに迎えに来るって……、高峰さんが……」

私の気の抜けたような返事の言葉にお祖母ちゃんはにこやかに言う。

「可愛い子だねぇ。 夏乃に会いたくて待てなかったんだろう? ここに来たらそのまま二人で出掛けなさいな」

ギョッとして、私はお祖母ちゃんに言う。

「それはダメ!ちゃんと無事に家まで着いたことを確認しないと私が落ち着かないから」

私としてもそこは譲れない。 両親の帰りを待ってて失くした時の記憶は、十年以上経ってもなかなか色褪せていないから。
だからそこは譲れない。 そんな私の態度にお祖母ちゃんは仕方ないといったように微笑んで、譲ってくれた。

そこで、お会計に呼ばれて支払いを済ませて病院を出ればこの間も乗った白のセダンが病院のロータリーに付けられていた。

「夏乃ちゃんのおばあ様、ご無沙汰しております。今日はおばあ様をお送りしてから、夏乃ちゃんをお借りしますね」

「ふふ、どんどん連れ出しちゃってちょうだい」

ニコニコと楽しそうに言ったお祖母ちゃんに、高峰さんもとてもにこやかに返した。

「そうですね、出張が無い時は確実に週に一度は会いたいと思っています、週二回会えるのが理想的ではありますがお互いにいい大人なので、そこは尊重しあって決めますね」

そんな回答に、お祖母ちゃんはさらに高峰さんと笑いあっていたのだった。

あの、本人のはずの私が置き去りなんですけど……。
ただ、会いたいと思ってもらえるのは悪い気はしない。
私とお祖母ちゃんが乗り込むと、高峰さんも運転席に座って車は自宅方面に走り出した。前回に乗った時も思ったけれど、高峰さんの運転はスムーズだし安心して乗っていられる。
そんな私にとってめずらしい車中も、終始お祖母ちゃんと高峰さんが面白そうに会話をしているのを聞きつつの移動になった。
たまに私にも話が振られるけれど、困らないような会話に次第に少し感じていた緊張も溶けていったのだった。