「楽しそうだな、翔太」


センセに渡された資料を見ていたら、遅れてやって来た副会長の亮介がパックジュースのストローを咥えたまま言ってきた。


だが、今の俺はそんな態度も気にならない。
鼻歌でも歌いたい気分だった。


「んー?わかるかー?」
「そんだけニヤけてりゃ誰でもわかるっての」


パックの中身が空になった音が部屋に響く。
亮介はそれを机に置きながら、俺の目の前に座った。


「何があった?」
「ヒミツー」


親友の亮介でも、言えないことだってある。


というか、言えるわけがない。
神田里歩が好きだなんて。


正直、言いふらしたい。
普通のカップルみたいに、彼女に引っ付きたい。


でも、相手はあの真面目で一生懸命で、不器用なセンセだ。
俺がそんなことを言ってしまえば、センセを困らせてしまう。


そんな顔が見たいわけじゃない。


「あ、わかった。ハロウィンパーティーが楽しみで仕方ないんだろ。お前、会長になったら絶対にやるって言ってたもんな」


……そういうことでいいや。
間違ってないし。


「でもさあ。なんでハロウィンを学校で?すぐあとに文化祭もあるんだし、そこで仮装すればよくね?」