「遥くん、どう?」



高級感漂う広い部屋の真ん中に置かれたソファーに座りながら目の前で私の作ったクッキーを食べる彼を不安げに見つめる。



「…美味しいよ、依良」


そんなわたしにふわりと綺麗な笑みを見せた彼は、



滝川 遥架 (タキガワ ハルカ)

この国の経済を支える滝川グループの跡取り息子であり、わたしの幼馴染みであり、

好きな人だ。




「本当!?……良かったぁ」

美味しいと言ってくれた事にホッと胸を撫で下ろすとクスクスと笑われた。


「そんなに心配しなくても依良の作ったものなら何でも美味しいから大丈夫だよ」

「そんな訳ないよ」


嬉しいけれど何でも美味しいなんてあるはずないじゃない。


唇を尖らせながら不満だと遥くんにアピールして見せれば


「おいで、依良」


と優しい眼差しで片手を広げる遥くん。



「…………、」


わたしはそのまま吸い込まれるように向かい側に座っていた遥くんの隣へと行く。