目が覚めたら、そこは光輝が店長を務めていた喫茶店だった。
私はカウンターの端の席で、うつ伏せになって寝ていたらしい。


懐かしい夢を見たせいか、頬が濡れていた。


「お目覚めですか、志鶴さん」


とても年下とは思えない雰囲気を醸し出しているのは、バイトの白木(しらき)くん。
まだ何も知らないのか、店内の掃除をしている。


「……私、どれくらい眠ってた?」
「五分くらいだと思います」


そう言われて、壁にかかっている時計を見た。
確かに、あれから十五分程度しか経っていない。


「……ごめんね、白木くん。開店前に来ちゃって」
「いえいえ。志鶴さんは特別ですから。そうだ、何か飲みます?」


掃除が終わったのか、掃除用具を片付け、キッチンに立った。


私は首を横に振る。


「でも、店に来るなりいきなり眠るなんて、相当昨日の疲れが残ってるんじゃないですか?入ってきたときなんて、顔色も最悪でしたよ」


昨日の疲れが残っているなんてことはない。
原因は、間違いなくあれだ。


「遠慮しないでください。志鶴さんに無料で提供したって、光輝さんは怒りませんよ」


手を洗いながら見せる、白木くんの笑顔が眩しい。