「あー……なんで校則なんてあるんだろ」


サイドでまとめられた三つ編みをほどきながら、志鶴ちゃんはぼやいている。
僕たちが通うこの学校では、三つ編みは禁止されていたのだ。
入学したばかりということで、今回は注意で許されたらしい。


「三つ編み可愛いのに。ね?光輝」


彼女の髪は三つ編みをしていたせいか、若干ウェーブがかっている。


「うーん……でも、校則は校則だから、守らないと」


すると、志鶴ちゃんは分かりやすくふてくされてしまった。


「光輝には私の気持ちはわからないんだよ。だから、そんな冷たいことが言えるんだ」


こうなってしまった志鶴ちゃんを説得するのはなかなかに難しい。
だけど、校則の存在理由がわからないからと、また校則違反をするような子にはなってほしくない。


「志鶴ちゃん、本当に校則がどうしてあるのかわからない?」
「わかんないし、わかりたくもない」


志鶴ちゃんの髪は、後ろで一つに束ねられている。
自由な髪形にできないこと、僕が変な質問をしたことで、志鶴ちゃんは完全に不機嫌になってしまった。


「じゃあ、校則は必要ないと思う?」


志鶴ちゃんは一瞬の躊躇いもなく、頷いた。