「海、久しぶりです」

「昔は?よく来たの?」

「そうですね。小さい頃、父もいた時は海水浴に来てましたし、母と二人になってからは潮干狩りに来てました」

「食い気に走った?」

「ふふっ、そうですね。食い意地の張った親子だったので」

穏やかな午後、海水浴にはまだ早い海岸にはお散歩を楽しむ人達の姿が多い。もちろん私達も防波堤の上の遊歩道をのんびり並んで歩いている。心地よい海風に吹かれながら、私は言い忘れていたお礼を口にする。

「そういえば、ありがとうございます」

「ん?」

「ずっと運転してもらって、美味しい海鮮丼のお店にも連れて行ってもらったので」

「ああ、そんなことか。誘ったのは俺なんだから、それくらい当然だ。わざわざ礼を言ってもらうことじゃない」

「いえ、お礼は大事です!だってあんなに豪華で美味しい海鮮丼、初めて食べましたから」

クスクスと笑いながら真面目な顔で言い切ると、つられたように修吾さんもクスクス笑う。

「それを言うなら、俺は成美に謝らないと」

「謝る、ですか?」