そこからはとんとん拍子に進んでいった。私自身は何もしていないので、事態が進んで行くのをぼーっと見ていたというのが正解だけど。

二人で食事をしたその日のうちに連絡先を交換して、翌日には主任が手配してくれた引っ越し業者へ見積もりと引っ越し日の予約を入れた。
新居は高崎主任が今住んでいるマンションにすると言われたが、「広さに問題はない」という言葉を信じて間取りも聞いていない。

その後、私は急な引き継ぎをしなければならなかったし、高崎主任は元々仕事が忙しい人なので平日に会う事はしなかった。ただ、主任からはマメにメールが来たし休日には呼び出されて覚書ももらった。



「覚書って……契約書みたいですね」

休日の昼下がりのカフェ。お洒落なテラス席に座っている二人の前にはお互いの飲み物と一緒にA4サイズの書類。ケーキやパフェといった華やかなものがテーブルを彩っているカップルが多い周囲からは浮いているけれど、これが自分達だと思えば気にならなかった。

「まぁ、そうだな。ここにこれからの生活における決まり事を書き出しておいた。他にも決めておいた方がいい事はあるか?」

「そうですねぇ……」

真面目な主任の表情に私も真剣に読み進めて、あれ?と疑問に思う。