梅雨の開けた空は高く、昼間の気温はどんどん上昇していた。


それでも夏休みが来るにはまだ早い7月上旬。


あたしは妹のエマと一緒に河原へ来ていた。


今年4歳で幼稚園の年中さんのエマはゴロゴロとした丸っこい石を積み上げて遊んでいる。


川の水位は低く、穏やかな流れの中に小魚の群れを見つけた。


エマと一緒なら自分も川に入って遊んでもいいかもしれないと思っていたのだけれど、エマはせっせと石を積み上げていく作業が楽しいらしく、もう10分も同じ動作を繰り返している。


そんなエマを見ていると、あたしはふと《さいの河原》という言葉を思い出した。


《さいの河原》は両親より先に死んだ子が行きつく地獄で、河原で小石の塔を積み上げて行くのだ。


最後まで石を積み上げることができればこの世に生まれ変わることができるが、鬼が来ては小石の塔を崩して行ってしまうらしい。


もう少しで完成するはずの塔は簡単に崩れ去り、子供はまた1から石を積み直して行くのだ。


そんなことを考えていたせいだろうか、不意にゾクリと背中が冷たくなった気がして振り向いた。


後ろには誰もいない河原が続いていくばかりだ。