「真湖りん。
 もう疲れただろ。

 僕ら帰るから休みなよ。

 ごめんね。
 急に来ちゃって」

 羽村がそんなことを言うのを雪乃はぼんやり聞いていた。

 真湖はずいぶんアルコール度数の低い酒を出してくれていたのだが、それでも、普段、呑まないせいか、かなり酒が回っていたようだ。

 真湖を気遣う羽村の言葉を聞きながら、雪乃は思う。

 やさしいなー、羽村さん。

 真湖りんさんにだからなのかなー。

 でも、私にもやさしかったな。

 なんだかんだで、夜道は危ないからって、ついててくれたし。

 私をもてあまして、此処まで連れてきてくれたし。

 いや……私に、この可愛らしい真湖りんさんを見せて、諦めさせようとしているのかもしれないけど。