此処はひとつ、やはり、定番の言葉で断ろう。

 駅に着いたとき、羽村は言った。

「あのさ、君の事情はわかったけど。
 僕、好きな人が居るから。

 うちの父親を通じて、君のおじさんには、よく言っといてもらうから安心して」

 すると、彼女は、ちょっと、しゅんとし、
「そうなんですか。
 付き合ってらっしゃる方がいらっしゃるんですか」
と言ってきた。

「いや……、付き合ってはないんだけど」

 いきなり傷口に塩を塗りこまれたぞ、と思いながら、そう言うと、
「そうなんですか?」
と彼女は小首を傾げ、言ってくる。

「でも、羽村さんに告白されたら、みなさん、オーケーなさると思いますけどね」

「いや、だから君、僕のこと、悪党顔だって言ったよね……?」