陛下が手を握ってくれた。
不思議と手を握ってもらうと安心する。
牢屋の前に行くと影近達が座っていた。
怪我の手当てをしてあるが痛々しい姿だ。

「何だ?俺らに死刑でも言い渡しに来たのか?」

影近は、フッと笑いながらそう言ってきた。
何だか諦めている雰囲気だった。
すると1人の忍びが私にすがるように頭を下げてきた。

「お願いです。俺らは、いいですからリーダー
いや影近様だけは、助けてやって下さい!
この人は、次期当主なんです。
そうではなくても長の半蔵様の具合が悪いのに
影近様まで居なくなったら伊賀が潰れてしまいます」

「次郎。余計な事を言うな!?」

えっ……?
影近は、慌てて止めようとするが次郎という忍びは、
構わずに話し続けた。

「俺らにとって影近様は、伊賀の憧れなんです!
こんなところで死んでいい人じゃねぇ」

必死に訴えていた。
この忍びは、影近を慕っているのがよく分かった。
それに……長の具合が悪い……?
伊賀の長って……確か私の祖父ってことよね?

「ねぇ、伊賀の長が具合が悪いってどういうこと?」

私は、気になりそう聞くと影近は、
堪忍したのか大きなため息を吐いた。
そして私をジッと見つめてきた。

「半蔵様は……祖父は、重い病を持っている。
年もあって今は、寝たっきりだ。
そう長くないだろう……だから
早く紅葉叔母様の娘の姿を見せてやりたかったんだ」

切なそうな表情で話す影近だった。
そのために私を……?
祖父の顔なんて知らない。
でも、どんな人か考えたことならある。
居るのなら会ってみたいとも思った。

「お願いです。影近様を東洋の国に
帰してあげて下さい!!」

次郎という忍びは、また必死に訴えてきた。
私は、心が揺らいだ。
理由が理由なだけに……助けてあげたいと思った。
ミアのこともあるし。

「俺は、情けで生きたいとは思わん。
殺すなら殺してくれ」