「ウェディングドレスなのに白無垢を彷彿とさせますね。すごく素敵!」


エトワールで行われた二度目の打ち合わせで、長谷川が嬉々として眺めたデザイン画。

描かれているのは、紬花が朝方までかけて見直した、和の美しさと洋の華やかさが融合させた2ウェイ仕様のウェディングドレスだ。

ベースはビスチェスタイルのマーメイドラインドレスとなり、教会では洋装イメージを強くする為に、ボリューミーなオーガンジースカートを上から装着。

ウエスト部分にはビジューベルトを用いてアクセントにしている。

教会挙式後の披露宴ではオーガンジースカートを取り払い、今度は着物生地を施したマーメイドラインのオーバースカートを装着。

大きなバックリボンは帯のようなデザインにし、ハイライトに金色の帯飾りを使用して和の印象を強くしている。

また、チュール素材のトレーンもバックに流すことにより、入場にシーンに華やかさをプラス。


「和装イメージのオーバースカートは、裾に赤い生地を邪魔にならない程度に入れ込むと、より着物っぽくなるかとは思います。こちらがそのスケッチです」


あらかじめ用意しておいたもうひと手間加えたデザイン画を長谷川に見せ、提案を進めていく紬花。

その隣に座る陽は長谷川の反応を見て、紬花に任せて正解だったことを確信する。


(これからは、少しずつ橘にもやらせてみるか)


アシスタントとしてはまだ一年も経っていないが、経験が浅いなら経験を積ませてやればいい。

独り立ちできるようフォローしながら、紬花が見つけた夢であるデザイナーとして羽ばたけるよう成長を見守ろう。

楽しそうにヘッドドレスにも着物生地を使うことを提案する紬花の横顔を眺めながら、陽はそっと心の中でゆるやかな成長を応援していた。