台の上に置かれた遺体に、大河が「この人は……!」と呟く。

「この人って、新聞やニュースで報道されてるバレエダンサーじゃ……」

「大塚哲也だな。自宅で亡くなっているのが発見された……」

大塚哲也の遺体を見て、朝子と田中聖(たなかひじり)も声を出す。藍は予感が的中したと思いながら遺体を観察していた。

大塚哲也にはチアノーゼが見られた。窒息死の特徴だ。

しばらく観察をした後、藍はメスを手にする。そして言った。

「午前九時三十分。解剖を開始します」

大塚哲也の体にメスが入れられ、藍たちは臓器を取り出していく。

「心臓の血液量、右心が……」

「肺を確認します」

順調に解剖は進み、大塚哲也の死因は急性呼吸不全だとわかった。

「大塚哲也は、亡くなる数日前から発熱や頭痛があったそうです。病院では風邪と診断されたようですが……」

如月刑事の部下である原光矢(はらこうや)刑事が言う。藍たちは考え込んだ。