パリッとした糊の匂いがする。

…ピッカピカの新品の制服。
今日から女子高校生です。

「美桜ーっ!行くぞー!!」

「はぁーい!!」

そして新居。

お兄ちゃんと私は約束通り、二人暮しが始まった。…なんの風の吹き回しか、お父さんが買ってくれたのだ。


バタバタと下に降りる。

「おはよ!」

「制服、めっちゃ似合ってる」

「…ありがと…」

…私自身、制服がとっても可愛くって、着るのが楽しみだったから、大好きなお兄ちゃんに褒められて、多分顔が真っ赤だ。


白いブラウスに、黒の生地に白の縁どりのネクタイ。黒いジャケットには、聖蘭学園のかっこいい校章が。プリーツのたくさん入った、膝上のスカート。腰くらいまで伸びた焦げ茶の髪にお気に入りのカチューシャを付けて。薄くだけど、メイクもした。

…高校生活は楽しく過ごしたいもん…!!

お兄ちゃんと一緒に外に出た。

ふわっと暖かい春の風が私たちを包んで、自然と笑顔になった。


「おっはよー!」

「おはよ、美桜!」

「…おはよ。」

そこにはいつもの3人の顔が。

……初めてあった日から、ほとんど倉庫で生活していた、お兄ちゃんと私。

大雅、飛羽磨、昇矢、お兄ちゃん、私。
そして、龍雅のメンバー全員と、

色んな思い出を作ってきた。

もう、家族みたいなもんだ。

私のことを、龍雅のみんなは認めて、受け入れてくれた。

「「「めっちゃ制服似合ってる」」」

「ありがと!」

「…おい、蓮翔…こりゃあ、やばくねぇ?」

「あぁ、美桜に学園中の男たち、なんなら女までが群がる様子が目に浮かぶ。」

「だよな…やばいよな。」

…なんかコソコソ聞こえるけど…?

「ねぇ!早く行こ?遅刻しちゃう!!」

「そうだな。」

「…俺らが守ればいい話だし。」

「やっぱ、護衛付けるか…」

朝からコソコソしちゃって、嫌な感じ。

5人で車に乗りこんだ。

いつも、飛羽磨の家が、車を出してくれる。
そして…私の大好きな…

「瀧さん!!今日もよろしくお願いします!」

「美桜ちゃんおはよう」

飛羽磨の家のドライバーさんの瀧さん。

優しくて、大人な雰囲気で、大好き。

…パパみたいな?そんな感じ。

いつも通り、どうでもいい、たわいもない話をしていたら、いつの間にか学園前。

「瀧さんありがと!!行ってきます!」

「行ってらっしゃいませ。皆様。」

由緒ある重みを感じる校舎。

桜の花が満開で、晴天の入学式日和だった。

そして、人、人、人。

芸能人の出待ちかなというレベル。

「大雅様っ!!」

「…おはよう。」

「今日も爽やかぁ!やっぱ、王子様♡」

「飛羽磨くんっっっ」

「みんな今日も可愛いね!おっはよー!」

「可愛すぎるぅ!!!やっぱ聖蘭のアイドルだわぁ♡」

「昇矢様ぁぁ!!」

「………」

「今日もクールぅぅ!!すてきぃぃ!!!」


「「「蓮翔様ぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」」」

「…おはよ」


「うはっ!」



…うん。毎朝この惨劇見なきゃなのかな。

泣きわめく子、鼻血が出てる子、倒れそうになってる子。


…………?



すっごい、囲まれてるんだが?!


「君、入学生?」

「可愛いねぇ!どこ中出身?」

「名前なんて言うの?」

「僕が体育館まで案内してあげる!」


…お、おう。

ちょっと倒れる寸前なんだが。

お兄ちゃんたちどこぉぉお??

龍雅の子たちと、やっと仲良くなれてきた私。

…まだ、知らない子は…。。




「どけ。」

「失せてね、君たち」

「俺の美桜だから」

「…………」

お兄ちゃん、大雅、飛羽磨、昇矢が人混みの中から現れる。

サッと血の気が引く男の子たち。


お兄ちゃんの高圧的な話し方。

爽やかすぎる微笑みで、すごい発言をサラッとする、大雅。

いつもにこにこ飛羽磨が無表情で、私を抱きしめる。

そしてなんと言っても、昇矢様の睨み。


…こっちまで怖くなってきた。


「も、もう、大丈夫だよ。」



4人に完全包囲されながら、体育館へ向かう私たち。


……高校生活、既に幸先が不安です。