「…つまり…」

朝陽先輩が口を開く。


「俺は夕陽に忘れ物を届けてもらうよう頼んだ。

夕陽はからかいに来た…?…ってこと?」


「まぁ簡単に言えばそういう事じゃね?」

夕陽とやらはケタケタ笑いながら喋っている。


「あ、あの…」

状況が理解できない。

私は夕陽に話しかけた。

「…あなた、誰ですか…?」


心の底から意地悪そうな笑みで彼は答える。

「俺は高橋 夕陽《タカハシ ユウヒ》。

コハルチャンの好きな朝陽クンの双子の弟。

隣駅の高校に通ってる。


…で、

制服で俺が朝陽じゃないって分かんなかった?」


…言われてみれば確かに違う。

だが、窓の明かりさえもない薄暗い部屋では

ブレザーやネクタイの色の見分けはほぼ不可。

ほぼ同じ形の制服に、

ほとんど同じ身長、顔。


これは判別が難しすぎる…。

私は泣きそうになっていた。


「おい夕陽、小春ちゃんが可哀想だろ。

さすがに悪趣味だぞお前。」


朝陽先輩…優しい…。


「そうか?朝陽、騙されんなよ。」


それに比べ夕陽先輩…腹ただしい。


確かにそうかもしれないけど、

あなたがやったんじゃん…!


「あぁ、もうなんでもいいから夕陽帰れよ。」

「それより朝陽部活行けよ。」

「その前に帰れ。小春ちゃんと話がある。」

「俺もコハルチャンに用事があんだよ。」

「無いだろそんな用事。帰れ。」

「いいからさっさと部活行けよ朝陽!」

「帰れよ夕陽!」


目の前で同じ顔2人が喧嘩している…。

朝陽先輩は早く部活に行かないと

そろそろ本当に時間がなくなってしまうし、

夕陽先輩は…まあ帰って欲しいところだけど…


「あの、朝陽先輩、部活行ってきて下さい…。

その…えーと…私、朝陽先輩に進路相談したくて

今日時間作ってもらったんですけど…。

また後日話聞いてください!」


こういうしか無かった。