- 君が好き

それだけで世界を変える 変わる -


イヤホンから流れてくる大好きな曲。

私、鈴木 小春《スズキ コハル》高校1年生 は、

学校のトイレで鏡とにらめっこをしていた。


鏡の前に何度も立っては

頭のてっぺんからつま先まで確認する。


( 変じゃ、ないよね…?)

今日は私にとって、決戦の日。

( 今日は、今日こそは、告白するんだ…!)


念入りに制服のシワやホコリを払い

髪を結び直す。

お化粧崩れがないかもう一度よく確認して、

深呼吸。


……それをこれで10回目。


( あぁもう私のバカ!いつまでやってんの!)


私の想い人は、高橋 朝陽 《タカハシ アサヒ》2年生。

学校1…県1…

下手すれば日本1綺麗な顔立ちをしている。

容姿端麗、眉目秀麗、

彼のためにある言葉のようだ。


さらに見た目だけでなく中身も素敵で

誰にでも分け隔てなく優しく接してくれる。


もちろん告白はたくさんされてる。

だけど、彼女は作らないらしい。

…好きな人、いるのかな…?


『先輩っ、おはようございます…っ!』

私は毎朝彼を見かける度に挨拶をした。

『毎日ありがとう、おはよう、小春ちゃん。』

…名前、覚えててくれたんだ…!


こうして挨拶する度に、

もっともっと好きになって…


『俺んち実は犬飼ってるんだけどさ、

俺の言うことだけ聞いてくれないんだよね〜』

『両親と弟の言うことは聞くんだけどなぁ…』


どんどんたわいない話もできるようになって…


最初はそれだけでよかった。

少し話せるだけで嬉しかった。


だけど、いつしか欲張りになって…

『先輩の隣を堂々と歩きたい』


抑えきれなくなるくらい大好きになって、

だから…だから、告白する。

振られてもいい、この気持ちを伝えたい。

そう決めた。


今日の朝、やっとの思いで

『先輩、今日の放課後、お時間ありますか…?

南棟4階の準備室で、待ってます!』


告白した訳でもないのにドキドキしてて、

今にも心臓が飛び出しちゃいそうで、

こんなんで告白なんか、出来るのかな…。


何度も何度も深呼吸する。

言いたいことも頭の中でシュミレーションする。


鏡の前で笑顔の練習をして

私は準備室に向かった。