次の日、大川君に電話してみた。今度の土曜日に例の店に一緒に行かないかと誘ってみた。だが、今度の土日は家族サービスがあると断られた。

それで池内さんに偶然会ったことを話した。今度3人で会って話をしないかと言ったら、機会があればそうしたいと言っていた。3人なら気兼ねなく会える。ほかに女性の同級生が近くにいればなおいいと思ったが、大川君にそれを提案すると近辺にはいないとのことだった。

土曜日、僕は再び美香の店を訪れた。前日に予約指名しておいた。美香は僕のことを憶えていてくれた。

「やっぱり、また来てくれましたね」

「どうしてそう思った」

「前に来た時に私の顔をじっと見つめていたから」

「そんなに見つめていたかな」

「誰かに似ているのですか?」

「初恋の人かな、そのまま付き合っていれば結婚したかもしれない」

「そういうお客さんはいるみたいです。ここで仲良い子がおなじみさんにそういう人がいると言っていました。そういう人は浮気をしないで通ってくれて毎回必ず指名してくれると喜んでいましたから」

「結構あるんだ」

「そうだったら、私がその彼女の代わりをしてあげます」

「代わりでもいいのかな?」

「それで私があなたを癒やしてあげられるのであれば、やりがいというか誰かの役に立っているのが嬉しいんです」

「美香さんは優しい良い娘だね」

「これが仕事ですから」

「確かに心と身体を癒す立派な仕事だと思う」

「そうでも思わないとやっていけませんから」

「君と話していると、確かに癒される気がする。それに遂げられなかった思いが果たせた気になってくるんだ。ごめんね」

美香を抱いているとまるで紗奈恵を抱いているみたいだ。顔は似ているが、紗奈恵の身体はどうなんだろう。

美香は今回も何度も上り詰めて果てた。前に来た時は演技だと思ったが、そうではないみたいだ。それならもう言うことはない。

僕は彼女を抱いて横になっている。この時間が至福の時だ。心地よい疲労の中で少し眠ったかもしれない。

「もうそろそろ時間ですよ」

「うつらうつらしていた」

「私もそうです」

「また、寄せてもらいます」

「無理しなくてもいいです。もしこられたら指名してくれると嬉しいけど」

「もちろん指名するよ」

◆ ◆ ◆
それから、僕は月に1回はその店を訪れた。もちろん美香を指名した。それで紗奈恵のことは忘れられると思っていた。

あれから駅で彼女を見かけることが何回かはあったが、声をかけることはやめておいた。人妻だ。それにどこでご主人や同じマンションの住人に見られているとも限らない。マンションだからそういうことは伝わらないと思うが、ご主人に誤解も与えたくない。彼女も同じだろう。