図書館を出たとき、すでに放課後の時間になっていた。


これで、制服姿で街をうろついていても大丈夫そうだ。


「寺までどのくらいだ?」


紀人に言われて「ここから1キロくらいの場所だよ」と、返事をした。


歩いて行っても10分くらいで到着する。


「腕が痛むのか?」


「いや、今のところ大丈夫。痛み止めも持ってたんだ」


そう言って紀人はポケットから薬を取り出した。


「記憶にはないけど、ちゃんと病院へ行っていたみたいだ」


紀人はしきりに首を傾げて続ける。


あたしも眠っている間の現象については不思議でならなかった。


仮に自分たち以外の誰かが、あたしたちになり切って行動していたとすれば、こうして怪我の手当てができているわけがなかった。


ということは、紀人本人が病院へ行って手当てを受けたということなんだ。


「どうなってるのかわからないけど、あたしたちが妙な世界に巻き込まれたことは事実だよね」


あたしは歩きながらそう言ったのだった。