わたしは、ストレスがかかると、リストカットをするクセがあった。

 始まりは友人の裏切りから、その友人との交換日記をカッターで殴りつけるように切り裂いたとき。ふとしたはずみで、指を切った。

 不思議と指先は痛くなく、流れた血液を見て、きれいだと思った。

 次は、処女を失ったとき…。ヤリ逃げされた悔しさと、自分の馬鹿さ加減に嫌気が差して、腕に傷をつけた。

 それからは、自殺未遂で1回手首を思いきり、セーフティガードのないカミソリでいったりして、わたしの部屋から刃物が消えた。

 でも、我慢できず、セーフティガードのついたカミソリを分解して、リストカットを続けるわたしに、青田さんと先生だけは、肯定的だった。

先生は、
「自殺をしようと思うなら、サバイバルナイフを買って、腕切り落とす勢いでやらないと、今の医学なら死ねないよ。」
「わぉ!マジか…買いにいく金ないし、めんどいけいーわ!やめとく。リスカはよかろ?」
と言うと、先生は私の腕の傷を、優しく包んでこう言うんだ。
「辛かったね。こんなに傷ついていたんだね。」
と。

青田さんは
「愁ちゃんが、真面目に生きようとしてる証だよ。頑張ってるんだね。ただ、手首の側にしちゃうと、力加減で危ないから、後ろの腕の方にしようか。」
と言ってくれた。

 わたしのしていることが、否定されなかったことに、安心感を覚える。
 ……が、父ちゃんと母ちゃんは違った。こんなことを繰り返すわたしに、叱責しかしなかった。

「なんでお前はやっていいことと、悪いことの区別がつかんのか?」
「愁ちゃんはやっていいことと、悪いことの区別くらいつくよね?母は信じてるから。」

 わたしには、わからなかった。今も多分わからない。だって、他人には優しくしろって教わってきたよ?

 でも、わたしが「死ね!」とか「消えろ!」とか言われてたとき、なんて言った?

「言われる方にも責任がある。」
………理不尽な理由で言われ続けてるのに?………

 泣いて学校に行きたくない!つて訴える娘になんて言った?

「何でそんな弱い子になったの?情けない!お姉ちゃん達は何があっても学校にちゃんと通ってるのよ‼」
………お姉ちゃん達も学年の2/3くらいの人達からの罵声や嘲笑を浴びていた?…………

 あの頃わたしの話は聞かなかったのに、なんでまた、わたしが怒られてるの?
 聞きたくないって言うから、黙ったんじゃない!
 泣くと怒るから泣かなくなったじゃない!
 他人を傷つけるな!って言うから、自分を傷付けてるだけなのに…。

 この人達は一体何が言いたいんだろう…???

 何で、わたしが唯一見つけた血路を塞ぐんだろう。わたしは、必死で生きようとしているだけなのに…。