約束の時間が来ると、僕はすぐにIDを追加した。

画面に表示されたのは『N』という名前と真っ白なアイコン。

明らかに怪しそうだが、僕は追加を選び続いてトークルームを作成する。

一体何と送ればいいのだろう?

ケニー先生はコンタクトを取れ、などと言ったが僕は別にコミュ力が高いタイプじゃない。

ましてや、初対面の知らない相手に目的も分からず接触するなんて空を掴む様な話だ。

考えた末、僕は文字を打った。


『初めまして。ケニー先生の紹介で連絡しました』


こちらの名前を明かさず最低限の情報だけを伝える。

毎日死ぬことばかり考えているのに、こんなことで保身に走ってしまう自分が馬鹿馬鹿しい。

すると五分後、以外にも早く返事が返ってきた、


『貴方は救いを求めているのですか?』


まるで修道女の様な問いかけに少し戸惑ってしまった。

迷った挙句、正直に答える。


『はい。貴方は?』


程なくして、短い返事が返る。


『同じです』


どうやら目的意識は共通しているようだ。

ケニー先生はもしかしたら、ずっと前からこの展開を計画していたのかもしれない。

この『N』という人物が僕と似た境遇の持ち主で、遠からず僕と引き合わせるつもりだったのでは?

五年がかりで僕に歪んだ人格を植え付けたマッドサイエンティストだ。あり得ない話ではない。

そこまでは推理出来たものの、そこから先へ会話が続かない。

連絡は取れたが、お互いの素性もするべきことも分からないのだから当然の話だ。

その時、


『あっ』


向こうから短いメッセージが届き、更に続いてLINEが来た。



『ケニー先生からアプリのURLが届きました』