「藍、これ持って行きなさい」

「大河くん、藍をよろしくお願いします」

藍と大河が帰る日がやってきた。香澄と渉は駅まで二人を見送りに来ている。

「……ありがとう……」

藍はニコニコと笑う二人を見つめ、目を細める。一人娘を心配してくれる温かい人たち。もしも家族を持つのならこんな家庭にしたい、そう藍は思った。

「お世話になりました!ありがとうございました!」

ぺこりと大河は頭を下げる。藍は、二人に大河が本当は彼氏ではないことを話していない。村で水谷美雪の事件もあったため、安心させてあげたいという気持ちの方が強いのだ。

二人に手を振り、藍と大河は電車へと乗る。座席に座ってしばらくすると、ゆっくりと電車は動き出した。

「はあ〜……。ただの帰省じゃなくなっちゃいましたね〜。いつもより疲れた気がします!」

電車がホームを離れてしばらくしてから、大河が深いため息をつく。藍は「色々とありがとう。私にできることなら何でもするわ」と大河にお茶を渡した。