「面倒くせぇ」


あいつの親父からボディーガードを頼まれた俺は、与えられた部屋のベッドに横になると愚痴をこぼす。

別荘来て早々、子ども部屋に閉じこめられたり、いろいろ俺をイラ立たせる事件は多々あった。

でも、その中でもいちばん俺の胸をモヤモヤさせているのは校門での出来事だ。


『剣斗くんは、なんのために戦ってるの?』


あの問いかけと、あいつの悲しそう顔が頭にこびりついて離れねぇ。

あいつの残像から逃れるように目を閉じれば、思い出したくもない過去の記憶が蘇る。

***

あれはたしか、俺が中学3年生のときだ。

学校から帰ってきた俺は、親父にものすごい剣幕でしかられた。


『剣斗! また学校で騒ぎを起こしたらしいな。お前は警視総監の息子なんだぞ。その素行の悪さ、いいかげんにどうにしかないか!』

『あ? あんたの息子だからって理由で、金せびられたから追い払っただけだっつーの』


どこで情報が流れたのか、俺の家が金を持ってると知った学校のやつらから、俺はよくかつあげに遭っていた。