◆ Side Kyo
「花蔵恭!」
その女とはじめて出会ったのは、中学1年の5月だった。
もともと集団行動が嫌いで、色々あって荒れてた俺の元に、突然姿を見せたひとりの女。
なんでも入学してたった1ヶ月で優等生のレッテルを貼られたソイツは、教師に俺の面倒を見るのを強制されたらしい。
その女にとっても俺にとっても面倒な話だ。
「……なんだよ」
「わたし、西澤鞠っていうんだけど。
知ってる? 一応同じクラスなの」
「知らねー」
家にいるのが嫌で学校には行ってたけど、授業には一度も出ていない。
いつも屋上か、使われていない旧音楽室のどちらかで時間を潰す。……せっかく静かなところを見つけたのに、俺の世界は、コイツのせいで崩れ去る。
「じゃあいま覚えてね? 西澤鞠。
今日から、毎日来るつもりだから」
「……来んなよ」
「わたし、意地でも来るわよ。
今日は自己紹介だけにしとく。また明日ね」
……人の話を聞かねー女だな。
しかもマジで自己紹介だけして出て行きやがった。
「………」
初対面での印象?
そんなの、ただのめんどくせー女ってだけ。
強いて言うなら名前も覚えてない。以上。