「ただいまぁっ」



「おかえり、蒔。

荷物片付けて手洗ってらっしゃいね」



「うんっ!」



学校にいる間は、授業を受けていればあっという間に時間が過ぎる。

果歩やハセがいるから特にさみしいなんて思うこともなく、今日もハセと下校した。



その途中、夕飯の買い物に行って。

時刻は17時過ぎ。ランドセルを背負ったまま顔を覗かせた蒔が、わたしに「ただいま」だけを言って廊下を引き返していく。



数分後に言われたことを済ませてもどってきた蒔は、どこかきらきらした目で「これなにー?」と首をかしげた。

ソファの脇に置いてある、ダンボール。



さきほど届いたもので、深く考えずにリビングに置いたけど、自室に持っていった方がよかったかもしれない。

中身は、あの誕生日パーティー用のドレスだ。




だから蒔に詳しいことは話せないし、「触らないでね」とだけ伝える。

お姉ちゃんの荷物だから、と言えば、どうやら興味も失せたらしい。



「……ねえ、蒔」



「なぁにー?」



夕飯を作ろうと思って取り出した調理道具を、すべて元の場所におさめる。

手を洗って、エプロンの紐をほどいた。



「ご飯、外に食べに行こっか」



「おそと? 行くっ」



「ふふ、じゃあ準備しよう」