◇
「ただいまぁっ」
「おかえり、蒔。
荷物片付けて手洗ってらっしゃいね」
「うんっ!」
学校にいる間は、授業を受けていればあっという間に時間が過ぎる。
果歩やハセがいるから特にさみしいなんて思うこともなく、今日もハセと下校した。
その途中、夕飯の買い物に行って。
時刻は17時過ぎ。ランドセルを背負ったまま顔を覗かせた蒔が、わたしに「ただいま」だけを言って廊下を引き返していく。
数分後に言われたことを済ませてもどってきた蒔は、どこかきらきらした目で「これなにー?」と首をかしげた。
ソファの脇に置いてある、ダンボール。
さきほど届いたもので、深く考えずにリビングに置いたけど、自室に持っていった方がよかったかもしれない。
中身は、あの誕生日パーティー用のドレスだ。
だから蒔に詳しいことは話せないし、「触らないでね」とだけ伝える。
お姉ちゃんの荷物だから、と言えば、どうやら興味も失せたらしい。
「……ねえ、蒔」
「なぁにー?」
夕飯を作ろうと思って取り出した調理道具を、すべて元の場所におさめる。
手を洗って、エプロンの紐をほどいた。
「ご飯、外に食べに行こっか」
「おそと? 行くっ」
「ふふ、じゃあ準備しよう」