◆ Side Hiromu



好きになったのは、はじめてその笑顔を見たときで。

鞠がモテるたびに不安になって、男どもを冷たくあしらっていたあの頃は安心していて、でも、やっぱり。



「……すごいね。首席、今回も橘花さんじゃん」



俺は、はやくそれ以上の仲になりたくて堪らなかった。

何度玉砕しても構わないから、隣にいたかった。



何度も何度も告白を繰り返していたのは、

ほかの男に対する牽制だって言ったら、笑われるだろうか。



──偏差値70越えの進学校である、藤咲第二。

それでもテストの結果には、大きく差が出るわけで。



「あいつが首席じゃなかったことねえじゃん」



テスト最終日の翌日、昼休み。

貼り出されたテスト順位トップ100の1番上には、相も変わらず鞠の名前がある。一緒にその結果を見にきた男友達は、俺のそれを聞いて、やけに悪戯っぽく目を細めた。




「彼女自慢?」



「自慢、ってか……すげえのはほんとだし」



「まあね。よかったじゃん、付き合えて」



……つーか、俺次席なのに鞠と13点も差空いてんじゃん。

あいつテスト直前に俺と買い物行ったりしてんのに、よくあんな点数取れんな。……その分、裏で努力してんだろうけど。



「で、昨日のお家デートはどうだった?」



「お前はじめからそっちが聞きたかったんだろ?」



今回も自信があったのか、それともただ興味が無いだけなのか。

鞠は順位を見に来ることもないし、前に一度褒めてみたけど「当たり前でしょ」と素っ気なく返されただけだった。