「そーいやお前さ、」



「うん?」



恭と付き合うことになって、しばらく経った。

今日は雨だから室内で、お昼ご飯を食べながら恭がふと思い出したように話しかけて来る。



「なんでその色にしたんだよ」



「……ピンクにしたかったから?」



主語のない問い掛けだったけれど、恭の視線がわたしの髪に向いていたから、何のことなのかは言われなくてもわかる。

既に数回色を抜いて染め直した髪は、はじめて染めた時よりも圧倒的に目立つピンク色をしていた。



ド派手なショッキングピンク。

はじめから目立っていたことに変わりはないんだけど、個人的にとても気に入っている。




「そもそも、髪じゃなくても良かっただろ。

テキトーなこと言ったけど、校則なんていくらでも破る方法あるってのに」



「うん。だから、わたしがただ染めたかったの」



「………」



「恭と出会ってなくても、

いつかはこの髪色やりたいなぁって思ってたから」



ちょうど良かった、と笑ってみせる。

そうすれば恭の手が伸びてきて、髪をもてあそぶみたいにくるくると指に巻き付け始めた。



「……ずるいよな」



至近距離で髪に触れられて、呼吸が止まる。

自分からあんなに好きって言っておいてなんだけど、いろんなことにドキドキしてしまう。