side 今宵

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「なんもしないよ」




駆くんのその言葉でやっと動けるようになったけど、未だ緊張が全身に広がっている。



だって、男の子の部屋なんて初めてだもん……。




馴染みのない雑誌や、整頓された学習机を落ち着かない気持ちで見渡すと、自然と一箇所に目が留まった。




シンプルな部屋の壁に貼り付けられたコルクボードだけがとても派手な色味を放っているから。




近づいて見ればHappy birthdayとタイトルされていて、駆くんが友達と映った写真が所狭しと並んでいる。




今と変わらずクラスの真ん中にいる雰囲気の駆くん。爽やかで明るくて、屈託のない笑顔。



今と変わらず、そうおもうんだけど。



何か違う。なんだろう?この違和感……?



それになんで一箇所だけぽっかりとスペースが空いているの?



まるで何か剥がしたみたい。